APTベトナム2020 その3

APTベトナム

メインイベントDay2の日だ。

本日も晴天なり。ポーカーをするには絶好の天気である。

ポーカーの試合は一日に休憩を入れて9時間以上おこなう。体調管理が大事なのだが、昨日は自分の不甲斐なさや妙にテンションが上がってしまい、あまり眠れなかった。午前中に仮眠をとらなきゃ・・・と思うものの仕事をやっていたら、あっという間に試合の時間になってしまった。

試合開始前に「20bbくらいもあればまだまだ戦えるっす」と周りに強がりを言って自分を奮い立たせる。弱気になっちゃ弱い手がくる気がする。

座席表を見て、相手のチップ量や名前を確認する。どうやらプロはいなさそうだ。普段なら強いプレーヤーと当たれると嬉しいが、大金がかかっている大会ではできるだけプロとは一緒になりたくない。ワイは勝ちたいんや・・・。

自分のテーブルに着席し、ビリビリと昨日チップを入れた保管袋を破り、チップを整理する。うむ。なんど数えなおしても17,800点だ。僕のミスプレイは夢じゃなかった。

次々にプレーヤーが着席し、お互いの顔を見合わせる。よく見たことあるのか。以前プレイの内容を思い出せるか。どこの国籍か。専業っぽい雰囲気か。声をかけてくる友達は誰か。専業独特のあの死んだ目をしているのか。などなど、読み取れそうな情報をチラチラと盗み見しながら確認する。

結局「あの人・・・なんか強そう・・・」ぐらいしか分からないのだが、この試合が始まる前のピリリとした緊張感。嫌いじゃないぜ。

「シャッフル&ディィーールッッ!!」大会主催者の合図と共にATPベトナムメインイベントのDay2開始した。

ポジションは残念ながらビッグブラインドだ。あまりチップないのになぁ、とため息をつきながらカードを見ると「KQ」が手に入る。

ミドルからレイズが入り、誰もコールせずに僕のところまでやってくる。とりま、コール。

フロップが開く。9 t jだ。

フロップ

あ、フロップストレートできた。フラッシュドローが怖いけど、ちょっとチップ欲しいなあ…ということで、3000ほどベット。すると相手がしばらく悩んでオールイン。イージーコール。

相手は99のセット。僕のハンドを見て、あちゃーって顔になる。ほっほっほ。

ターン

ターン 4

リバー

リバーも4ッ!

ほ!!!!?

終   

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制作・著作 MHK

ええええええ!!!

うそ!まじ?うそうそ!まじ?でじま!?ふぁっ!ふぁーー。

突然の出来事に脳が追いつけず、三の倍数でもないのに知能指数が著しく低下する世界のモリャーマ。

まさか開始1分1ハンドで飛ぶとは誰が予想できただろうか。

夢遊病者のようにふらふらと席を立ち、煙草は吸わないけど煙草スペースへ。近くのソファに座り、窓をはい回っているトカゲを眺める。トカゲはワンハンドで飛ばされなくていいなぁ。

実はまだリエントリーが可能である。今が最後のレベルで、500/1000だから25bbで入ることができるのである。どうする、どうする、どうする。

もし昨日負けていたら、今日の3時から行われる4万5千円くらいの大会に出る予定だった。あと・・・追加で5万5千円を足せば、メインをもう一度出れるのではないか。すぐに飛んでも3時の大会には出場しないと考えれば予算的にはいけるのではないか。

ええい、久しぶりのポーカーだ。今年もなんとなく忙しいような気がするし、行けるときに行かずにいつ行くというのだ!思ひ出はプライスレス!(10万円)

知能指数が著しく低下したまま、気が付けばテーブルに戻っていた。

何もしないまま時が進んでいく。20bb以下になる頃にようやく冷静さを取り戻す。てか、20bbってかなりキツいぞ!?一発退場も普通にありえーる。10万円の一発勝負なんて、どんだけ富豪やねん。数年前にアメリカで獲得した300万円だってもう底をつきそうになっているではないか。東京の陽の当たらない6畳ワンルーム(冷蔵庫なし)を思い出せ自分!

いつも通りルサンチマンをたぎらせ鬱屈した猫背でカードと向き合っていると手元にAAが!いい具合にレイズも入る。もちろんリレイズ。すると相手はかなり悩み、77をこちらに見せてフォールド。くぅーー、ダブルアップしたかった。

その後もQQ、KKと来るが、誰も相手してくれない。減りもせず、増えもしない状況が続く。

レベル12(600/1200)ボタンでTT兄弟。ありがたいことに誰も参加せずに、僕まで回ってくる、20600点しか持ってなかったけど、スチールっぽく見えるよう3,500のベット。初心者のSBがおり、8万点くらい持ってるベトナムのおっちゃんが、案の定オールイン要求してくる。スナップコール。相手はATs。見事にすり抜けダブルアップした。

ダブルアップ直後に初日に隣に座っていたFRDさんが隣りに移動してきた。FRDさん、56でブラフを仕掛けたり、フラッシュ完成させたりと派手なプレイでチップの流通をぐるぐると回していく。今日も見てるだけなのだが、ショート気味なので、どこか僕も華のあるプレイをしなければいけない。

次の戦うタイミングを伺っているとテーブルブレイクになった。FRDさんとお互いの幸運を祈り合い分かれ次のテーブルへ。

あれから4時間が過ぎレベル16へ。特にダブルアップもなく、15bb~25bbの低空飛行でなんとか生きながらえている。

レベル16。77がKKに負けて、5bbぐらいのショートになってしまう。もはやここまでか・・・と誰も参加者がいないボタンの時に7Kでオールインをすると、0.5秒でBBにTQで受けられる。

すると今大会最大の運を発揮し、7KKとボードがピカりと光って開く。フルハウスの完成であり、勝ち確定。あまりの強さに負けた人も含めテーブルの全員が笑う。漫画で表現するなら「どっっ!!」と擬音がつくような明るい笑いだ。

とはいえ、10bbに戻っただけ。もう一回必要で、まだまだ道は険しい。

ダブルアップから1周後、さっきと同じ誰も参加していないボタンポジションからA7でオールイン。するとSBがAKでコール。これはまずい。

ターンで7が当たる

おお、珍しい!肩の弱さでは京都でも上位に入る僕が、連続で勝っている。なんとか再び生き残ったのである。

喜びの束の間・・・再びTT兄弟が手元にやってくる。チップも15bb程度だったので、アンダーザガンからオールイン。するとすぐに隣の席の兄さんもオールイン。隣の席よりチップが多いおっさんもオールイン。さらにSBの白人の髭中年までが「おいおい、勘弁してくれよ・・・。三人もオールインで俺に今このハンドがやってくるのかい?降りれるハンドじゃないんだよ」とチップをすべて前に出したのだった。

4Wayオールイン。

365人参加で今61人。賞金獲得ラインが37位からだ。ここで大きく勝てれば、バブルのあのしんどい時間を乗り換えられる可能性が高くなる。

ハンドは僕がTT、隣がJJ、との隣がAK、最後に悩んでいた白人がKKだった。

皆がワイワイ騒ぎ出すものだから、他のテーブルからも野次馬が集まる。さあ、ここ一番だッ!

フロップ

Tよ刺され刺され!!!

ターン Q

お!ストレートガットもついた。Jでもいいのか。いや、Tはどうだっけ・・・?

リバー T

あ、Tが刺さった!やったのか!?いや、Jがストレートだ!!!!あっかーん!セット引いたら負けのやつや!!!

そんな感じで、僕のメインイベントの最後だけは華のある感じで終わってしまった。なんとなく納得のいく負け方だったが、順位だけを見たら遠からずの場所にいたので、若干の悔しさはある。

あと1時間もたてばDay2も終わる時間だったので、メディア席を陣取り、ブログの下書きをしながら日本人選手のday2通過を待ち、その日も皆と共に食事に出かけたのであった。

晩御飯のベトナム料理屋では、皆が怖がって食べない生ガキをちゅるちゅると食べた。もうメインも飛んでしまって明後日には帰るのだ。当たったら当たった時だ。そもそも今日の僕は当てることなどできないのだ。Day2通過してたらたぶん当たってた。

ビールをがぶがぶと飲んで、ワニのような目になりながら、ホーチミンの夜を粛々と消化していくのであった。

その4に続く