今回のホテルはポーカー会場の向かいにあるオーシャンセンスホテルという場所を宿にした。
部屋はそこそこ広く、水回りも綺麗。お湯も熱すぎるくらいで、なかなか快適なホテルだ。

朝食は毎日フォーだが、毎回違う種類のフォーが提供され、フォー文化の層の厚さを思い知らされる(最終日まで本当に同じものは出なかった)。

近隣周辺は何もなく、建物自体も内装工事がほとんど終わっておらず、側だけが出来上がっている。側のデザインがすべて一緒で、運営するホテルが違う形らしい。周辺を散歩したのだが、数店舗のホテルが入っているだけで、あとは店舗らしきものは何もなく、ある意味ゴーストタウンのような佇まいをしている。


ホテルの裏に川が流れており、そのギリギリに作られたベンチに座って、ぼーっと水面を眺めていると、巨大な魚が跳ねている。ベトナムの朝の9時はまだ暑くなくすごしやすい。

会場のホテルはプライベートビーチを併設しており、室内プールと屋外プールなどもあり、家族連れには良さそう。実際、欧米人の子供などが広々としたプールを自由に泳いでいた。この夏に家族で行った和歌山の湯快リゾートとは、込み具合が全然違うぜ・・・。


残念なことにホテル会場にあるレストランしか近隣では食事することができず、車で5分~10分離れた場所まで移動しなければいけない。ホテル囲い方系はこの点が不便だ。
さて本日はメインイベントには出場せずに、メインのサテライト(予選)にまずは参加する。
日本と海外だと、やっぱりポーカーの雰囲気が違う気がしていてウォームアップが必要。いきなりメインは、慣れる頃に飛んでしまうことが多い。
サテライトの仕組みが凄く面白かった。
今回のバイイン額では5人に1人がチケットが貰える。50人参加すれば、10人が本選参加へのチケットが貰える計算だ。普通のサテライトだと、40人が飛んで最終的に10人が残れば試合が終了である。
しかし、今回のサテライトでは、5人分のチップ(1万点スタートなら、5万点)を集めれば、試合中に本選チケット1枚に換金することができる。換金のタイミングは自由で、目標金額が達成した時でもよいし、チップをたくさんかき集めてからでもよい。一つのサテライトで、本選チケットを複数枚獲得できるチャンスがあるのだ(10万点集めたら2枚のチケットと換金できる。お金に換えてもよい)。
参加金額が低ければ低いほど強くなると定評のあるもりゃ~ま、無事にサテライトチケットを1枚ゲット。サテライト参加費が4万円で、メインイベントが17万円くらいだ。13万円も浮いた。これには普段は気難しいことで有名なもりゃ~ま氏も思わずニッコリ。

お金を全然使っていないにも関わらず、お昼ご飯を大川さんに奢ってもらい、その足で400ドルのトーナメントに出場するが、JJがQQに負けて終了。夜にもう一度サテライトに出場するが、今回は残念ながら滑ってしまった。
その足で、外に一人で外食に出かけ、生牡蠣とチャーハンを食べる。僕は胃が強いので、ナマ物も全然OKだ。生牡蠣は味がなく生臭く、チャーハンは油が滴るくらいギトギトで絶望的に不味く、晩御飯は大失敗で終了。涙で枕を濡らす。

※見た目はいいんだけどねぇ
三日目、ついにサテライトのチケットを使ってメインイベントに参加だ。さすがに最初からだと体力が持たないので、戦略的にレベル3から参加。4万点スタートでテーブルはプロのバッジをつけた人が一人、超緩いけど何故かひけるおじさんが目立っている。
減ったり増えたりしながら、原点周辺をうろうろ。なにごともなく、レベル8(500/1000)ぐらいから、じわじわ削られて3万点に。レベル9までにAKが一回。KKが一回だけで、あとは目立ったハンドはなく、特段ツイているわけでもなく、つまらないポーカーをしている。
普段はアミューズメントで20分ストラクチャーが多いので、40分は長く感じてしまう。眠いなあと思っていたら、突然周りが暗くなった。
停電だ。
秒速で非常灯が点灯した。会場は薄暗く、一応、ギリギリカードの数字は見える程度の明るさになる。wifiは謎につながっている。
会場がざわつく。ただし、パニック的な感じではなく、修学旅行中にトラブルが起きたような、不安と楽しみが交じり合ったような、ちょっとした盛り上がりだ。そして、我々はどいつもこいつもポーカー脳で、危機管理能力が低いため、1分も待たずにテーブルのカードを凝視しながらゲームを再開する。

サングラスをかけた兄さんが「カードが見えないよー」と嘆きながら、携帯のライトをつけて覗き込むようにカードを確認する。そんなアホな奴らを見かねたトーナメントディレクターが「このハンドで一旦とめて、ブレイクにはいります!」と大声をあげて会場を練り歩く。カオス。
昼寝をしていた大川さんから「近くに雷が落ちたらしい。外は嵐。エアコン切れた!」と連絡が来る。さすが運営側に限りなく近い人間である。情報が早い。
会場の外に出て、窓ガラス越しに外を眺めていると、10秒おきに空が光る。傘を持ってきたけど、これはけっこう濡れてしまうレベルの雨だ。ぼんやりと雷を眺めていたり、ツイートを眺めること30分。ようやく復旧して再開。停電って久しぶりだった。
なんとなく、緊張が途切れ、それと同時にハンドも滑りまくり、レベル10のレジスト前に負けてしまう。今回もいつも通り、これといった見せ場もなく、メインイベントが終了した。
その足で6カードオマハを大川さんと一緒にプレイすることになるのだが、11位くらいの微妙なところで終了。リバーでまくられて、バッドビートで終える。大川さんは4位でインマネをされていた。
次の日も引き続き雨だ。どうも、ハイフォンはすっきりと晴れた日がない。珍しく、ホテルの部屋にも傘が常備されていたので、雨が多い都市なのかもしれない。

17時からのミックスゲーム(ホールデム/PLO)に出たいけど、さすがに1日中何もしないのももったいないので、メガスタックに出場。お昼ごはんを食べに行くが、ホテルのレストランが混みすぎて1時間待ちと言われる。嗚呼、腹が減った。
お昼抜きで大会へ出場するも、お腹が空きすぎて、時間が流れるのが遅く感じる…アンパンマンなみに力がでない。なんか変なブラフして、あっさりと負ける。
ご飯を食べないと集中力もなくなり、イライラすることが齢四十を超えて理解。腹持ちが良さそうなハンバーガーを食べる。これでもう安心だ。

そして、楽しみにしていたミックスゲームに出場。ノーリミットホールデムとPLOをレベルごとに変更しながら行うゲームだ。僕的にはPLOだけでも良いんだけどね。
案の定というか、必然、当然、PLOで増やし、ホールデムで減らすという分かりやすい形で進む。スタートチップが2万点だったのだが、レベル5には64,500点獲得していた。増えたチップはもちろん全てPLOである。
レベル7のホールデムでがっつりと減らす。手札はA2。ボード223。JJ相手。リバーでJが落ちて、4万点失う。2.7万点になる。もはやホールデムの時間は寝ていればよいのではないか。
レベル10 500/1,000 NLH。現在、9,500点。本来ならば、どこかでオールインをしてダブルアップを狙うのだが、PLOなら3bbからでも逆転できる。早く、PLOにいってくれぇとひたすら祈りを捧げる。これが・・・これがミックスゲームの特徴なのか!(たぶん違う)
Level11 600/1,200 PLO。
QJJ9でオールイン。そして無事にトリプルアップ!31,000点まで回復。もはやPLOしか勝てん。それから一度がっつり減らし、2bbになるものの、レベル15までに3回オールインして、全て勝つ。ここにきて、急に肩がうなりだした。調子が出てきたゾイ。
残り人数7人。5人からインマネである。とはいえ、依然として僕は下から二番目にチップが少ない。一番少ないのは、ベトナム人のおばちゃんで典型的な硬いだけのプレーヤーだ。

レベル18 3,000/6,000 NLH。現在僕は34,000点。
ついに、このベトナム遠征で初のAAが僕の手元にやってきた。これは神からの福音であり勝利への予定調和だ。オールイン。ふむ、やはりな、相手はKKである。Aも落ちて安心安全納得の勝利。6.8点まで回復するが、周りは皆10万点以上なので、もう一声だ。
もう一人のショートだったベトナム人おばちゃんもしぶとくダブルアップして、6.4万点まで追いついてきた。周りの静観していた連中は僕ら二人が飛ぶのを待っていたのだが、さすがにヤバイと思ったのか、おばちゃんのダブルアップを契機に時は動き出した。
レベル19 4,000/8,000 PLO
AKQTがチップリーダーのロシア人のK853に勝つ。10万点まで回復。これにてショート地獄を脱出。僕よりチップが少ない者が二人になった!
レベル20 5,000/10,000 NLH
全員がヤバい領域に足を踏み入れた。僕らが飛ぶのを待っていた二人が削られ続けて、ついに飛んだ。インザマネー。ショートのおばちゃんと僕の粘り勝ちである。
現在時刻は夜中の13時。会場にいるのはスタッフと僕ら5人だけ。たかだか、40エントリーの試合なのに、アンティがないのとPLOを含んでいるせいで、人が減りにくい。
ちなみに本日は夜の10時からプレーヤーズパーティーがあるため、皆ここからバスで40分のクラブに出かけているらしい。「俺もプレーヤーズパーティーに行きたいよぉ」とメソメソしている奴がいる。こいつは要注意だ。行きたい奴は行けないのが世の理である。
アベレージが16bbで全員がオール・インスチールの状況。今まではPLOの方がわりと広めのハンドで逆転チャンスがあったから良かったんだけど、スチールメインになるなら、NLHのほうがいいかもしれない。PLOでフロップが開いてからバーンと打たれるよりさ。
ロシア人と僕が入れ替わりにショートを飛ばし、ついにレベル22(NLH)僕のAKとパーティーに行きたくてメソメソしていた男のAQがぶつかって、僕が勝つ。
ついにヘッズアップになる。相手は無表情のロシア人。僕が全体の7割のチップを持っており、圧倒的に有利なのだが、一発の勝負でぐるっとひっくり返される恐れがある。
このロシア人、PLOのチップ計算ができない。つまり初心者である。PLOに持ち込めば実力差で勝てる可能性が高い。しかし、ヘッズでまたNLHが15分も残っている。ジーザス!ホールデムで降り続けるか。否、二人で15分はあまりにもプレイ時間が長すぎる。下手なホールデムをやるしかない。
案の定、ロシア人はオールイン波状攻撃を仕掛けてくる。ハンドを開けて勝負する気は一切ないらしい。殴り合いの運ゲー、乗ってやろうじゃないか(PLOまでな!)。
いくつかの弱いハンド降り、K9のハンドで僕もオールインで降ろしにかかる。ロシア人、コール。ここで、試合が終わるか!?
ロシア人からA3が出てきた。そしてAのハイカードでロシア人が勝つ。
『やっちまったなぁッーーー!』頭の中のクールポコが餅つきを始める。男は黙ってオールインじゃあないんだよ、錦鯉が突っ込んでいる。僕は明らかにパニックに陥ってしまっている。
やばいやばいやばいやばい。チップ量が4対6になった。逆転された!深呼吸だ。素数を数えて気持ちを落ち着かせよう。
数ハンド捨て、このタイミングでAKがやってきた。相手からはオールインが飛んでくる。みんな、丸太は持ったか!行くぞッ!!!


相手のTTを破り、次は僕が6対4で優勢に。流れきてる。僕の幽波紋のピエール瀧が「もうええでしょう、もりゃ~まさん、京都からわざわざ来てくれてはるのに。もう勝たせてあげてもええんとちゃいますかねぇ!」と相手を睨みつける。
次はA4だ。ハンドが悪くない。10連続フェイスカードなしとか当たり前の世の中なのに、良いハンドが次々入ってくる。もちろん、オールインスチールを仕掛ける。
無表情のロシア人、珍しくニヤリと笑いコール。なんと相手からKKが出てくる。お前も選ばれし者かよ!?チートやん。

Aが落ちることなく、次はロシア人が勝つ。これには僕も思わず、信長の野望で屈指の人気を誇る二階堂盛義と同じリアクションを取ってしまった。チップ量が2対8くらいになった。ぐぬぬ・・・。
「もうダメだと思ったところから、仕事の始まりです」突然、京セラフィロソフィーを思い出す。200%稲盛会長が言っていることを間違った解釈をしているとは思うのだが、折れた僕の心には添え木が必要なのである。配られるカードよ、仕事してください!
QTh。悪くない。もうハンドを選んでられるほどのチップはない。PLOまであと5分だが、ここは勝負の時である。オールイン!ロシア人は3秒悩んでコール。相手はKJだ。マジで強いハンドしか出てこないな。まったくもう。



Tが2枚落ちて、ダブルアップ。Tが仕事してくれた!これで4対6と若干不利のところまで戻してきた。運が拮抗しているのか。
「なあ、俺たち一体、いつ決着がつくんだろうな」とロシア人が急に笑い出す。僕もつられて「へへへ、シーソーゲームでやんすね」と歪んだ笑みで返事をする。
ロシア人が急にリンプしてきた。ついにオールインをやめた。心折れたか。僕は背中を丸め、グニャリとしているが、実はもうメンタルは回復し、やる気に満ちている。これは勝てるかも!気持ちで勝ってる!でもハンドはT6なので、もちろんチェックだ。
有利なPLOまであと残り3分。時間を稼がせてもらうぜ。持ち時間は30秒、申し訳ないが、フロップターンリバー全部でそれぞれ29秒の牛歩させてもらう。悪く思うな、若ぇの。
フロップはT98。トップヒット・ストレートガット。
「チェストォォォォッッ!!!(オールイン)」考えるよりも先に手が勝手に動いてしまったでごわす!!ロシア人プレーヤー、こいつはもしや薩摩か?というような目でこっちを見てくる(ごめん、ワイ、札幌出身やで)。
無表情だったロシア人、大きく目を開き、息を一つ吐いて、ゴクリと喉を鳴らし、オールインコール。J8。ヒット&オープンエンドだ。
相手の気弱なリンプイン、先ほどの勝利ハンドTのトップヒット、必殺のチェストと勝利条件が全てそろっているので負けるわけなく、またやTのトリップスで勝利。チップ量は8.5対1.5になった。運命は僕の優勝に大きく傾く。

PLOは1分後に迫っていたが、このビッグウェーブに乗らない奴はいねぇよな。プリフロップ、僕は89でオールインし、リバーで無事にストレートを完成させて完全勝利。

先月に続いて、またもや優勝してしまったのであった。