APPTマニラ 8月 その1

APPTフィリピン2023

7月下旬。驚くべきことに、マニラのほうが涼しい。おそらく雨が降っているからかもしれないが、京都の肺まで焼けるような蒸し暑さはフィリピンにはない。熱帯モンスーン型気候という、いかにも暑そうな地域なのにだ。

今回はAPPTマニラの大会に来ている。こんにちは「もりゃ~ま」という中肉中背の中年おじさんです。普段は京都のアミューズメントカジノで酒を飲みながらカードを擦り、年に数回、海外に行って「やっぱり自分は弱いんだなぁ」と泣きながら帰国する系のレクリエーションプレーヤーでございます。

実は今回のポーカー旅、なんとメイントーナメントに出場しない。しない、というよりもメインの日程に別の予定が入っているため出れないのである。それでもなぜ大会にやってきたかというと、サイドイベントが充実しているからだ。

滑りまくれば、1日3回も違う種類のトナメに出れるような試合数(滑りたくはないけど)。今回は1週間の滞在予定なので合計16試合も出られるゾ(全部はきつい)。昔はスケジュールとストラクチャーの良さならAPT一択だったのだが、最近はユーザーに優しい大会が増えてきた気がする(お財布には優しくないが)。

そんなこんなでたくさんのサイドイベントに参加するため、フィリピンにやってきたのである。

夕方、会場であるオカダマニラの隣にある「キングスフォードベイショアホテル(Kings ford hotel)」に到着。

本当はオカダマニラに泊まれれば良いのだが、一泊3万円くらいするので京都の小市民たる小生には、いささか予算オーバーである。治安の問題は若干あるが、歩いて5分で通える一泊8千円のホテルが身の丈にあっている。

このホテル、実は初めて泊まる。最近は増えてきたポーカー系Youtubeなどでこのホテルの評判を知ってはいたのだが、改めて自分の目で見て思う。普通に綺麗で泊まりやすい。お湯も出る。ベッドも綺麗。音もうるさくない。部屋の広さは海外にしては狭いほうだが、悪くはない。

荷物を置き、いざオカダマニラへ。

カジノのちょっと強めのクーラー、ダラダラ歩いている腹の出た中国人、酸素濃度が高い空気、マカオでも良く耳にした「ピャーラピャーラピャーララー」というスロットの音楽、日本語以外の言語。今回も海外ポーカーにキターーーと、毎度のことながら気持ちが高ぶってくる。

今日は夕方のトーナメントには間に合わなかったので、キャッシュゲームを打つつもりだ。

その前に軽くポーカーの後ろにある飯スペースで晩御飯を食べた。疲れた体にビールがしみる。

キャッシュゲーム・・・5年ぶりくらいだろうか。久しぶりすぎて、立ち回り方をまったく覚えていない。とりあえず、50/100ペソに10,000ペソ(約2.6万円)持って入った。

テーブルは、韓国人、日本人、国籍不明がそれぞれ1人。あとはフィリピン人というテーブル。気を付けなければいけなさそうなのは3人くらい。ハンドを絞って静かにプレイ。1時間半ほどプレイした時、会場からトーナメント開始のアナウンスが入る。

今日のトーナメントは夜の8時からでもう間に合ってなかったはず(現在23時)。なんでや、と思いスケジュール表を見ると確かに23時からトーナメントがあるではないか。どうやらスケジュールが変わったみたいだ。

+2,600ペソの勝ち(約6,700円)でキャッシュゲームを終了し、そそくさとハイパーターボに出場する。タイトル通り、10分でブラインドが上がるストラクチャーで、ハイパーにターボな奴だ。

「あっ・・・あ・・・え~~~」と、ちいかわと同じ言語能力でしか表現できないようなプレイを華麗に披露し、5秒で飛ぶ(主観時間)。参加費の12,000ペソ(3.1万円)がなくなる。秒速で損失を出す男とは私のことである。

それにしても、どっと疲れた。まあ、そりゃあ、朝から移動しているのだ。夜中に疲れるのは年齢だけの問題であるまい。今日は素直に帰って寝よう。

この日は、ベッドに入ってグッスリ・・・と、思ったら夜中に目が覚める。

身体が寒い!鼻水があふれ出てくるし、喉も心なしかざらつき、奥歯が熱を持っている気がする。

そして、咳が・・・咳が出る!「咳をしても一人(by 尾崎放哉)」なんて、悠長に自由律俳句を思い浮かべている状況ではない。これは、風邪だ!

そういえばポーカー会場で、ゴホゴホしている人をチラチラ見かけた。くぅ、まさか初日に体調管理バッドビートを喰らうとは。とんだ甘ちゃんだぜ。

とりあえず寝よう。まずは話はそれからだ。米軍でも採用されている睡眠法(通称:米軍式睡眠法)を駆使しつつ無理やり身体を休ませた。

次の朝は昨日の深夜よりかは良くなってはいたが、明らかに身体のだるさと咳や鼻水が風邪を物語っている。

風邪を引いても食欲が落ちないほうなのだが、今回はそうでもない。日本にはないタイプの風邪なんだろう。普段は病気とは無縁の自分が弱っている。

インターネッツでフィリピンで購入できる風邪薬と近くの薬局を調べる。

それにしても、海外のお薬情報で日本語の記事があまりない・・・。いつの記事か分からないが、BioFluという風邪薬がフィリピンでは一般的らしい。本当かどうかわからないが、とりあえず藁にも縋る思いで買いに行くことにした。

フィリピンで有名なドラッグストア「Mercury Drug」に向かい、調剤薬局的なカウンターでBioFluをくださいと伝えると「いくつ?」と聞かれる。個数を聞かれたので「20個で」と答えると、20錠をバラでくれた。

青いなあ。

薬局窓口はこんな感じ

アメリカ人のスミス君が教えてくれた「風邪の時はコーラを飲め」と免疫力強化のためのビタミンCを接種するためのミニッツメイド(オレンジ)を購入。

コーラとオレンジでブルーな薬を流し込み、さっそく昼寝だ。睡眠こそが人類最強の治療法である。

目が覚めると大量の寝汗をかいていた。身体がウイルスと猛烈な戦いをしていたのであろう。気分はスッキリとし、身体が軽い。頭の中で、ヘルメットをかぶった猫が変なポーズを取りながら「ヨシ!」と言っている。元気だ。治った。いける!

身支度を整え、首や指をポキポキと鳴らしながら、エレベーターから降りる。試合までに体調を整える。これが長年、社会人をやってる者の心得だよ。よし、やったるか。

ホテルから外に一歩出ると、そこは土砂降りの景色が広がっていた。

傘、持ってくるの忘れた。

会場までは歩いて5分。走り抜ければ、たぶん1分くらいでもいける(歩道の横切りさえ上手くいけば)。でも、病み上がりで雨に濡れるって、考えただけでも寒気がする。タクシーもなんだか、この距離でお願いするのが申し訳ない。通り雨が多いから、少し待てばやむだろうか。

かの有名な井上陽水も「傘がない」ことを名曲に仕上げているので、傘がない問題は日本人の普遍的な悩みなのかもしれない。うう、行かなくちゃ(カジノ)。

コダックのように頭を抱えてロビーのソファにうずくまっていると、傘を持った女性が入口から入ってきて、コンシェルジュに傘を渡している。エウレカ!この手があったか!

パスポートのコピーをとるだけでホテルが傘を貸してくれた。ルンルン気分で、雨の中、スキップで濡れた道を歩いていると、うっかり深い水たまりに左足を突っ込んでしまう。あまりの深さに藤原竜也のような叫び声をあげてしまった。今日は感情の起伏が激しい。

落ち込んだりもするけれども私は元気です。と、まとめに入ってしまいたくなるほど気力を消耗してしまったが、なんとか二日目のポーカーを開始することができた。

本来ならば、APPT ナショナルという、前半の大きな大会を今回の目的として出るつもりだったのだが、この体調では、40分のストラクチャーに耐えられそうにない。(また、ゆっくり寝る時間も確保したかった)

ということで、15時からの15,000NHに出場。勝ったり負けたりとチップの増減を繰り返しながら、3時間くらいが経過。レベル10でぼちぼちレジストがクローズし、オールインする人も出て来る時間帯。

身体が重い。頭の芯の部分が何か詰まっているような鈍さを感じる。そして、鼻水。うう、やはり風邪は治っておらず、薬の効果がただただ強力なだけだったようだ。ぜんぜん「ヨシ!」でなかった。あの猫め。

ハンドも入らず、ぼーっとしている時間がすぎる。最後は、AThでオールインするも77にコールされ、何も当たらず終了。

20時から別のトーナメントがあり、あと数分で始まる。あの青い強力な薬を飲めば、数時間は戦える・・・。でもまだ一週間もあるのだ。まずは、本調子を取り戻すことが先決かもしれぬ。

フラフラの千鳥足で、その日はホテルに戻って、泥のように眠った。

つづく