APPTマニラ 8月 その2

ポーカー

日曜日の朝は優雅にコーヒーを片手に、ホテルの朝食を楽しむ。

というような余裕はなく、あの青い薬を飲むために、なんでも良いから腹に詰め込まなければ、と脂汗をかいたアラフォーのおじさん、鬼の形相でサラダとパイナップルを虫のようにムシャムシャ食べる。

だんだんマシにはなってきているが、まだ本調子ではない。このまま行くと、このブログはただただ闘病日記みたいになってしまう。なんとかしなきゃ。

お昼寝の睡眠を確保するため、本日の13時からのAPPTナショナルも見送りだろう。15時のPLOが走らなかったら、19時から20分ストラクチャーでのDAY1Cがある。そこまでに体調を整える必要がある。

「力(パワー)をお与えください」あの素っ頓狂な声をあげる筋肉系芸人に祈りを捧げ、決意の二度寝を実行ス。

結果どうなったかというと、大復活をとげる。

試しに「凝」をして身体を見回してみると、しっかりとオーラがあふれ出ている。おっと危ない、「纏(テン)」でオーラを身体に留めなければハンドが悪くなる。

試しに僕のスタンド「現場猫(ファクトリーキャット)」を呼び出してみた。「今日はいけると思うか?(ゴゴゴゴゴ)」問いかけるとかぶせ気味に「ヨシ!!」と威勢の良い返事が返ってきた。ディモールト・ベネ!うむ。やはりいけるか。

まあしかし病み上がりだ。無理をせずに行こう。

オカダマニラで皆がよく撮るオブジェ

PLOに着席。PLOはこのような大会がある時しかプレイしていないので、いつでも初心者気分だ。

逆にノーリミットホールデムは無駄に歴が長くなってしまったせいもあり、相手が下手だと思ってしまうと、ついハンドが緩くなり、逆襲をくらってチップを減らすことが多い。

このトーナメントに来る前にも、関西で有名な「豪KID塾」に顔を出した際に塾長に言われた。「参加しすぎないでハンドはちゃんと絞る。3ベットされたら降りてもいい」と。

塾長の言う通り、最近は参加するハンドが増えていた。フロップ以降である程度、自信がついたからこそ、TJや89などで積極的に参加しすぎていた気がする。傍目から見ても、参加しすぎに見えていたんだと、ハッとなった瞬間だった。真面目にハンドを選ぼう(真面目に塾にも顔出さなきゃ)。

いずれにしても、PLOは初心者なので、フロップで自分からポッドというのは、AAまたはKKに限定して、参加ハンドも4枚とも繋がっている形のものばかりをチョイス。

大きな事故もなく、逆にハンドが良い時に向こうが突っ込んできてくれたおかげで、無事に賞金を獲得。6位で終了。バウンティも4枚とれてホクホクだ(1枚5000ペソ(1.3万円))。本当はもっと上を目指したいのだが、こればかりは運もあり仕方ない。

PLOが無事に走ったため、APPTナショナルは完全に見送りになった。三日間行われる、メインの前座トーナメントだっただけに悔しいが、まあPLOで賞金獲得できたし、無問題だ。

(ちなみにいつもは、ブログ用にハンドをメモしているのだが、風邪気味でそこまで頭が回らず。すまぬ)

次の日のトーナメントは非常に頭を悩ませた。

12時から行われる10,000NHか13時からのメガスタックフリーズアウトか。ゲーム的にも賞金的にも明らかに後者のほうが面白そうである。つまり、人が集中するのはフリーズアウトの方かもしれない。

ええい、ワイはお金よりも名誉(トロフィー)が欲しいんや(お金も欲しいけど)。前者の方を選んだのだが、まるで失敗だった。前者のほうが人が集まっていたのであった。

そして、まさかの参加3ハンドくらいで飛ぶ。AK<JJセットで、序盤なのにいきなりオールインしてくるから、ついコールしてしまった。あまりにも悔しいので、リエントリーするものの、ハンドが入らず、自然死に近い形で終る。

メガスタックはまだレベル5くらいだったので、参加。いろいろ迷ったけど、結局二つとも出るという、昨日の賞金をすべて使い切るという悲しい事実。

入ってすぐの時だ。ショートがオールイン。手元にはAK。コール。ペロンとAが落ちて、ショートのJJを倒し、瞬きの合間にアベレージくらいに届く。ラッキー!さっき、これをやりたかったんだよ。

ハンドを絞って引き金を引く、ハンドを絞って引き金を引く・・・エヴァンゲリオンを操縦するかのように慎重にハンドを選び、変なブラフを抑えめにする。しかし、ブラインドが上がっていき、10~16bbの苦しい瞬間がずっと続く。

そんな時に思い出したかのようにKKなどが来てくれてダブルアップできる。TKの気合いのオールインが2回くらい火を噴くなどし、気が付けばバブルタイムへ。

入賞は13位からで、僕はたぶん下から5番目くらい。下二人がけっこうカツカツで下から3番~8番くらいが、ドングリの背比べ状態だ。誰か飛ぶだろう。と、皆が同じことを思ってグダグダにならければよいが。

心配をよそにすぐに上から3番目くらいの人がハンドが絡み合って飛び、無事、入賞確定。チップ量がもう10bbだから、もう厳しい。11位くらいがよいところだろう。

さらに時間が進み、ついに7bbに。僕はA2でオールイン。AJが相手から出てくる。

しかし、なんということでしょうか。

2が落ちてダブルアップ!負けてるハンドから勝つとか、久しぶりすぎる。

そうこうするうちに、ファイナルテーブルへ。

写真撮影と休憩で少し時間ができる。周りをぐるりと見渡す。プロのバッジをつけた人間が二人。うち一人はVPIP7割くらいなのに全然負けない鉄強。あとは、3人くらいは僕よりも明らかに実力が上。2人は分からず、1人と僕と同じかそれ以下な感じで、やはりというべきか、辛めのテーブルだ。

ここからが順位が上がるたびに賞金が10万円単位でグングンあがる。周りのチップ量もちゃんと把握しておかなければ。

ファイナルハンド、最初のハンドが配られる。

AA

この旅で初めてのAAだ。最高で最強のハンド。まさか、この晴れの舞台でやってくることが今まであっただろうか。いや、ない。ファイナルテーブルでのAAは海外トーナメントに100回以上参加しているが、たぶん初だ。

UTGのポジションから、エイヤと15bbのオールイン。「おいおい、せっかくファイナルテーブルに座れたというのに、もう出ていくのかい?」と隣の良くしゃべるおっさんが笑いながら、からかってくる。思わず僕はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

大量のチップを持っているハンドの7割を参加する例のプロがコール!相手はKJ。

無事に逃げきれて、30bbとアベレージまで持ち直した。これは・・・いいぞ!

9位、8位と決まっていく。30分ほど、一度も参加せずにいると、また勝負ハンドがきた。

AA

おいおい。これは優勝してしまうのではないか。レイズが入り、リレイズが入っている。状況も抜群によい。どっちかついてこい!オールイン!

すると、QQ、JJに降りられた。「おまえら、上手すぎじゃね」とプロが突っ込む。僕も同じセリフを心の中で突っ込む。オリジナルレイザーが「君が来なければ、QQオールインかます予定だったよ」と傷に塩。

4ベットオールインは、死ぬほど強そうに見えるよね・・・。ここは、コール止めして、オリジナルレイザーのオールインを誘うのが正解だったのか。でもJかQ落ちたら負けるし、できればAAはヘッズで戦いたい。優勝を目指すなら、リスクを取るべきだったか。ううむううむ。

そのあとは、今度はびっくりするくらいハンドが悪くなる。絵札を1時間以上みない。7位が決まり、僕よりもショートになる人も出てきた。人数が少なくなっているのだから、参加しなければいけないのに・・・36や28みたいなハンドが延々と続く。せめてTQでも勝負するので、ハンドをください。

まったく祈りが通じず、1時間ほど何も参加せずに見ていると、たくさんあったチップもついに、10bbくらいになってしまう。7Kh。これが直近で見た、もっとも良いハンドだ。もう、これでスチールいくしかない。

オールイン!降りる降りる降りる。また、いつもの7割参加おっさんが10秒悩んでコール。またもやKJだ。そして、ついに負けてしまった。K7<KJという当たり前の結果。

AAが二回も来たときは、ようやく自分にも優勝できるツキが回ってきたかと思ったのだが、やはり簡単にはいかなかった。

昔、ラスベガスのWSOP期間の900人規模のデイリートーナメントで2位になった時は、何をやっても勝てる一生に一度あるかの劇的幸運日だったのだが、あれくらいハンドがこないと優勝は難しいんだろうな。

ガックリと肩を落としてキャッシャーで賞金を受け取る。187,000ペソ。日本円にして約48万円。5位だったら、24万ペソ(61万円)だったから、自分よりショートが勝負するのを待てばよかったか。いや、それだと優勝は見えなくなったから、これでよかったんや。

ちなみに1位は日本円にして215万円くらい

次の日は、めちゃくちゃハンドが入るんだが、ショートのオールインにほぼ全て負けるという半ヅキ状態。AQやAKがわんさと入り、一切絡まない。KKも2時間の間に4回も来る。ポケットはさすがに勝てるのだが、相手がいない。

このツキさえ、昨日のファイナルテーブルにあれば・・・。心の中でコダックが頭を抱えながら、藤原竜也の叫びを上げている。圧倒的なハンドの強さでサクっと飛ぶ。

続きてショートデックへ。ショートデックとは、2~5までのカードを抜いたテキサスホールデムだ。唯一ルールが違うのが、フラッシュの方がフルハウスよりも強いということ。実はコロナ前に一度だけ遊んだことがあるだけで、まったく分かっていない。

携帯でプリフロップ表とオッズ計算の仕方をちらちら見ながら、周りの人の真似をするところから始める。レベル一つをまるまる無駄にしたが、なんとなく流れが分かる。フロップ後は、たぶんハンド出来まくるから、オマハと同じ考え方で良いと勝手に解釈し、「ブラフ一切なし戦略」「アウツの数が多ければ突っ込む」で行く。

ありがたいことにオールイン勝負にも勝ち、ストレートも無事に引け、残り10人のところまで到達。(33人くらい参加)賞金獲得は6位からである。

AQが来たのでレイズイン。僕が6位だったメガスタックを優勝していた人だ。

フロップでQが当たったので、オールイン。すると相手もコール。

AQ<79 フラッシュドローだけで来られて負けた。67Qのボードでフラッシュ。まさかの出来にくいことで有名なフラッシュで負けた。ファイナルテーブル手前で残念だ。

大変疲れたので、この日もキャッシュを打たずに、すごすごとホテルに帰ったのであった。

その日の夜のことである。

ドンドンドンドン!

突然、宿泊しているホテルのドアを激しくノックする音で目が覚める。枕元にある携帯を手に取り、目の前にかざすと、時間は夜中の3時50分。寝ぼけている頭でも分かる。非常識な時間だ。

酔っ払いが間違えて部屋を叩いているんだろう。まったく迷惑な。シーツをかぶり直し、まだ完全覚醒していないこの状態なら睡眠は可能ッ、と横になる。

ドンドンドンドン!「ホテルの者です!火災報知器が作動されました!申し訳ございませんが、開けてもらえませんか!」と今度はセリフ付だ。

やれやれ。敢えて不機嫌そうな顔をしながら、髪も直さず、着の身着のままドアを開けるとホテルの制服を着た女性と男性の二人組が立っていた。男性は女性の2歩下がったところで、無表情を貫いている。

「夜遅くに申し訳ありません。この部屋で火災報知器が反応しました。タバコなどをお吸いでしょうか?こちらはタバコが禁止の部屋になります」

「最後にタバコを吸ったのは20年前だよ」大学生の頃、好きでもないのにカッコつけて吸っていた黒歴史を思い出す。

「本当に申し訳ありませんが、部屋の中を見せてもらえないでしょうか?」

お好きにどうぞ、とホテルマンを中に招き入れる。タバコの匂いをチェックする二人。キョロキョロと見回し、異常がないことを確認する。「大変失礼しました」と腑に落ちないような顔で帰っていった。

寝ようとするが、まあ、眠れない。すっかり目が覚めてしまう。「フィリピンの夜明けぜよ・・・」ぼーっと窓の外を見ながら無為な時間をベッドの上で過ごす。

せっかく風邪が治ったというのに、半分徹夜明けのような体調で次の日のトーナメントに挑むが、ツキが逃げてしまったのかまったくボードと絡むことなく、見せ場もないまま次々とトナメが滑る。

会場で売っていたラザニアが地味に美味しい

メインイベントのDAY1も始まったということもあり、続々と日本人がやってくる。僕が初めて海外ポーカーに行った2014年くらいでは、日本人と同卓することの方が珍しかったのだが、今では、テーブルの半分が日本人という状況が日常である。

本日は京都からやってきたFUKUMARUさんと合流。なんやかんや、賞金を何十万と獲得し、フィリピンペソが余ってしまったので、両替をお願いしていたのだ。「助かりますぅ」とお互いペコペコしながらお金を交換。

そのあと、トーナメントも飛んでしまったため、皆と食事に行くことに。

京都のyu-ki君やじゃんけんポーカーの子、飛行機で知り合いになったという人など、自分を入れて6人でご飯。一人では行きにくいなぁ~と思っていたステーキ屋に入る。皆で食事をするのは楽しい。

21歳の一番若い子が宿も取らずにやってきたらしい。若さ溢れる無鉄砲な行動に皆で笑うのだが、ふと自分も初めてのマカオは宿も取らずにやってきたことを思い出す。どうにかなるだろう、と思っていたら、結局どうにもならなく、宿探しに時間を取られてポーカーの稼働が減るという悲しい結末だった。

「おっちゃんもな・・・約10年前にな・・・」危ない!おじさんの昔話が喉元まで込みあがってきた。皆、これからキャッシュを打つだの、ワクワクで目がキラキラして、若干そわそわしているのがビンビン伝わってくる。なんせ、本日着いたばかりだ。おじさんの昔話に付き合っている時間などないのだ。

ビールを二杯に留め、お会計をしようとする。キョロキョロと店員を探しているとFUKUMARUさんがすっと立ち上がり「大丈夫ですよ、行きましょうか」と店外へと歩き出した。

「若い人に何を話したらいいのだろうか」「ポーカー歴が長いことを鼻にかけて、自慢話をしてしまわないだろうか」と延々とくだらないことを考えている僕の隣で、すぐに皆がポーカーで遊べるよう、スマートに6人分の会計を済ませていたFUKUMARUさん。

同じ昭和生まれチームなのに、圧倒的な人間力の差である。いろいろ考えて、最終的に出てきた言葉が「お肉、美味しかったです」だった。ごちそうさまでした。

最終日のトーナメントも特に結果を残せず、終わる。本日やってきた、なぜか海外でもスーツ姿のJACKさんに声をかけてもらう。後半戦の方が友人が多かったから、来るタイミング完全に間違えた、と涙を流しながら、機械カジノ(大小やルーレット)で残った時間を潰した。(キャッシュは長蛇の列で断念)

そんなこんなで、皆がメインイベントを頑張っている最中、僕の旅は終わった。

前回はトーナメント(WPTハノイ)を全滑りして、ブログは書かなかったのだが、今回は2インマネできたので、ブログを再開してみた。動画の時代だし、今更ブログを書いてもなぁ、なんて思っているのだが、わりと楽しみにしてくれる人が多く「読んでるよ~」といわれるのが、モチベーションになっている。

そろそろ行ったことない国でもポーカーもしたいなぁ、と考えている。お勧めがあれば、教えてもらいたい。

ちょいと今回は記事を分割せずに、長文気味になってしまったが、ここまで読んでくれてありがとうございました。

それでは、また!