WPT台湾 2022年11月 その1

WPT台湾

服装を間違えてしまった。パジャマと移動用の小さなバッグを忘れた。爪を切り損ねた。

2か月前にフィリピンに遠征したばかりというのに、今回の台湾ポーカー遠征は初っ端から小さなミスを連発している。まだ何か忘れていることはないだろうか。渡航に関して、何も調べてこなかったぞ。不安だ。

・・・こんにちは。もはや絶滅危惧種と指定されてもおかしくない、ポーカーブロガーのもりゃ~まです。旅行記というか、私的な日記をネット上に垂れ流しています。今どきは動画だよねぇ・・・。

今回の旅はワールドポーカーツアー台湾。通称、WPT台湾。WPTは世界三大タイトルの一つで、ポーカーをやっている人間なら一度は聞いたことがある有名な大会だ。実は今まで一度も参加したことがなく、今回が初参加。

台湾は旅行で数回来たことはあるのだが、ポーカーのために訪れるのは今回がはじめてだ。

17日の夜に到着し22日の朝に帰国予定の5泊6日。会社には「強めの在宅勤務するんで!」と謎の伝言を残し、冬がひたひたと忍び寄りつつある底冷えの京都を後にした。

2か月前よりかは空港に人は戻っているようだが、まだ人は少ない。飛行機も同様で、AとC席の両端が埋まっているのがあまりなかった(一列に一人はいる程度)。

台湾には夜の8時に到着。simカードを購入したり、少し迷ったりしていて、実際にホテルにたどり着いたのは夜の10時くらいになった。ホテルは松江南京駅から徒歩5分くらいの「香城大飯店豪悦店(Happiness Hotel)」に宿泊。

部屋がめっちゃ広い。お湯も一瞬で出る。ちょっと古くてところどころ壁が剥がれていたりとオンボロ感は否めないのだが、よく言えばクラシックな雰囲気でおおむね満足。

ふらっとホテルの周辺を散策してみるが、どのお店も閉まっていた。コロナで閉まるのが早まっているのだろうか。開いていたのは牛丼チェーンの「松屋」くらいだったのだが、さすがに初日にグルメ大国台湾で日本食に走るのは、負けな気がする。

とはいえ、お店も開いていないし、わざわざタクシーを捕まえて夜市までいくほどの気力もなく、結局、近所のコンビニで日本では販売されてなさそうなお弁当とビールを買って、ホテルに戻った。すみっコぐらしのように、部屋の隅で背中を丸くしながら、ブロッコリー、メンマ、牛肉飯をビールに流し込んでこの日は終了。

~~次の日~~

時差は1時間だ。日本が10時なら台湾は9時だ。

実は朝から重要なオンライン会議がある。上半身だけをきっちりと整えて、電波状況が若干不安定のまま、無事に会議を乗り切る。

その他、金曜日なのでいろいろと仕事の話が舞い込んでくる。テキパキと処理をしているとあっという間に昼になった。台湾まで来て仕事をやるなんて無粋だと思っているが、よくよく考えたら在宅勤務中だった。

ああ、それにしても腹が減った……(孤独のグルメ風に言ってみる)

昨日はコンビニ弁当。今日こそは台湾を味わいたい。

タイトなジーンズに身体を捻じ込み、身支度を整えて、いざご近所探索へ!

どうやら細い路地に、たくさんご飯屋が点在しているようだ。繁華街である中山方面を目指して、ちまちまと細い路地を攻めていく。

あるある。10人以上で満席になってしまいそうな小さなお店の数々が。これだよ、これ。僕が求めていた路地裏がここにある。

どうせならローカルな店に入りたいけど、ローカルすぎると注文も不安で出てくる食事もガチャになってしまう。まあ、人生なんてガチャの連続なのだから、今更おびえても仕方がないのだが、せっかくなら食べたいものを食べたいのが人情というものだ。

表に写真掲載をしている店を見つける。ルーローハンの系譜に当たりそうな感じだ。よし、君に決めた!

金額は80台湾ドルだから日本円にして、360円くらいか。えらい安いなと思っていたら、わりと小ぶりな量で、食べたら食べただけ腹が減るタイプの食事だった。隣の若いサラリーマンが二つ頼んでいたから、そういう店だったのだろう。

なぁに食べ歩きにはちょうど良い!笑呵呵と中国語で微笑みを浮かべ、次の店へ!

ご飯が続くのはあれなので、次は麺類にすることにした。

お店はわりと広く、女性客が8割を占めていた。いつも通り注文にまごついていると、店員の若い兄ちゃんが流暢な英語で「君にはこれがよいだろう」と写真付きの日本語・英語・韓国語が記載されたメニューを持ってきてくれた。できる。

ワンタン麺らしきものを頼むと「他にはどうだい」とプッシュしてくるので、豆腐も頼んでみた。

僕が「飲み物はあるかい?」と聞くと「メニューにはないんだが、水なら用意できる」というので水を頼む。

そう・・・気が付いたのだが、台湾の昼飯屋には飲み物がないのだ。どこの店にも。この外人向けに用意周到なこの店を見回しても、持ち込んだオシャレジュースを持っている人はいるが、コップで何かを飲んでいる人は誰もいない。皆、辛いものを食べたときはどうするのだろう。

さて、肝心の食事なのだが・・・豆腐はただの揚げだし豆腐だった。これは日本の居酒屋とかでよく頼むやつだ。そして、麺なのだが・・・味が薄い!京都の薄味に慣れ切っている僕の舌でさえ、味をキャッチするのに苦労するレベルだ。アメリカ人なら「ただの水やん!」としか感じられないだろう。

もしや・・・と、思いテーブルの上を見回すと、たくさんの調味料がある。たしか、タイでは調味料を使って最終的に仕上げるスタイルだったはず。

この店もそうなのかもしれない。そう思い、謎のドロっとした若干の溶け切っていない固形物入りの瓶に詰められた茶色い液体とコショウと魚醬などをふんだんに入れてみる。

結果、複雑な味になる。悪い方向での。

どうしたものか。食べれないわけではないのだが、お腹がある程度満たされた今となっては、無理をして食べ進めるのも考えものである。岸田総理なみに検討を加速させている時「ところでどこから来たんだい~」と先ほどの兄さんが気さくに声をかけてきた。

日本だよと答えると、奥で調理をしていた不器用そうなお父さんが『ありがと~~~~』とカタコトの日本語で嬉しそうな顔を覗かせてきた。隣にいたお母さんも笑顔だ。僕はワンタン麺をすべて食べきった。

食べ過ぎの身体を引きずって、ようやくポーカー会場へ移動する。

会場の近くはちょうどメインイベントの休憩に入ったのであろう、煙草を吸っている人で道があふれており、これが毎日続くようであれば確実に問題に発展することが容易に予想できるくらい煙が宙を舞う。

人の間を抜け、地下にある会場へ。

さて、参加するにあたってアプリで登録しなければいけないのだが、ありがたいことに日本語が喋れるスタッフさんがいて、手取り足取り教えてくれて困ることなくスムーズに完了。

本日は2Dayのフリーズアウトイベントに出場する。初日からメインイベントに参加することもできたのだが、毎回、勘所が戻らないまましょうもないミスをしでかすのでウォームアップが欲しいと思っていたのだ。

フリーズアウトのレベル1からしっかり参加するのだが、レベル3まで特にハンドが来ない。20分回しなので、1時間ほどで一番良かったのがA7。ブラフをしないわけではないのだが、できるようなシーンもこない。

さらに1時間経過し、レベル6(300/600)に突入。一度、QQが来たのだが、スチールで終わってしまい、そのあとは一度もAT以上のハンドが来ない。捨てたハンドでもボードと絡むことがないので、嫌な雰囲気だ。

じりじりとチップだけが減っていき、レベル7で初めてAQが手に入る。12bbをオールイン。するとAJにコールされ、Jが落ちて負けた。

勝てる気がしなかったけど、本当に勝てなかった。ダメな時は何をしても本当にダメの典型の例だ・・・。参加費15,000台湾ドル(67,000円)もしたのになぁ。きつい。

※会場はこんなところです

気を取り直して、次はメインイベントのサテライトに参加だ。

レベル2でようやく本日初のAKが来た。K3で適当にコールした人が3を二枚拾って勝った。いやー、不運確定継続中なのだろうか。

レベル4。スタートが8,000点なのですでにもう10bbしかない。そして、手元にはAQ。ポジションはカットオフで自分の所まで全員ダウン。選択肢は1つしかない。もはやこのカードが墓標に見えてきた。

ウォンウォンと心の中で獣のように咽び泣きながら、オールイン。するとBBの帽子を深くかぶった男がコール。出てきたのは「Q7」さすがにこれには負けたくない!

何事もなく、無事にダブルアップ。ようやく大きく勝てた。ここから一気に運気を取り戻していきたい。オカルトポーカープレーヤー(アマチュア)として運の流れを信じているので、今のダブルアップで邪気が払えたと思うんだ!

ダブルアップから3ハンド後、A9hでオープン。先ほどの帽子を深くかぶった男がコール。

ボードは2h6h8s。ハートが二枚。

とりまレイズ。すると、帽子の男、オールインしてくるではないか。こちとら、先ほど貴君から奪ったチップで20bb以上になっているのだぞ。

結論からいうと、もりゃ~まはこの時、チルっていたのである(感情的になって冷静な判断ができない状況のことをチルという)。負けが続いたり、嫌がらせのような攻撃を受け続けたり、大きく負けた時に人はチル状態に陥ると思われるのだが、実は大きく勝った時にもこいつはやってくるのである。

笑呵呵、負ける気がせぬ!サテライトでのんびりもできないしね(いいわけ)!こちらもオールインだ!

相手は2ペア。か、関係ないんだから!フラッシュ一筋ですから!

はわわわわ。

どやぁ。

無事に40bbまで戻り、しばらくは安心のお財布状況に。フラッシュが引けるのは、本当に運気が戻ってきた証拠かもしれん。こうやってオカルトに磨きがかかり、僕は弱くなっていくのであろう。

1度目の休憩で参加人数が確定した。71人。この中から14人がサテライト(予選)を通ってメインイベントに出場できる。生き残っているのは残り37名。

ハンドは可もなく不可もなしといったところで、大勝することもないが、大負けをしないで、アベレージを維持しつつ試合が進んでいく。

そんな中、BBポジションの時にAAがやってきた。しかもボタンまで全員ダウン。ボタンは15bbくらいでスチールするかどうか迷ってる。悩んだ末、K8でオールインしてくれて、無事に僕のチップの仲間入りしてくれた。

16位の人を僕がT3で飛ばし(ショートがボタンから3bbでオールインしてきて、BBの僕が自動的コール)、バブルタイムも特に困ることなく、じっとしているだけで終えることができた。

参加費8,000台湾ドル(3.6万円)で33,000台湾ドル(14.8万円)分のチケットをゲットできた。差し引き11.2万円分くらいのお金を節約できた。趣味でポーカーをやっている京都の小市民にはけっこう大きな金額だ。助かる。

時計を見ると、夜中の13時を過ぎている。かれこれ12時間以上ポーカーをしていたようだ。時間を自覚すると、どっと疲れを身体が認識する。

テーブルでちょっと仲良くなった韓国の方に「また明日、メインでな〜」と握手をかわし、タクシーに飛び乗る。ホテル近くのコンビニでビールのロング缶を一つ購入し、1分以内にグググと飲み干し、ベッドに倒れる。

パジャマを忘れたせいで、服装がそのままだ。快適じゃない・・・住環境が下振れだ(自分のせい)、そんなことを考えていたら、いつのまにか眠りについていた。

つづく