APT ベトナム その1

APT ベトナム 2018

どうも僕が海外にポーカーをしに行こうとすると、天候が荒れる。

この間、10月にマカオに行った時もだ。まさか、行と帰りの両方で台風が猛威を奮う。

本日、出発の日も関東や北陸が大変なことになるらしい。出発前夜にTwitterを眺めていたら、雪の被害の画像がチラホラと流れていた。

どうか飛行機が無事に飛びますように・・・と、祈りが通じたのか、京都はただただ寒いだけで、関空の空もいたってのんびりとした天気。何事もなく、僕は無事にベトナムに到着した。杞憂でござった。

さて今回の大会は、僕が2年前によく参加していた「アジアンポーカーツアー」通称APTだ。ストラクチャーが長く、サイドイベントも充実していて「ポーカーで遊べた!」と感じられる、けっこう好きな大会である。(おまけに参加費も手ごろ)

例によって例のごとく、誰を誘うわけでもなく、一人でホテルを取り、一人で寂しく単身、共産主義国家に飛んで行っている。

2年前、よく海外ポーカーへ共に出かけていた還暦を超えた友人Oさんは、ポーカーをするためオーストラリアへ向かったようだ。LINEでお互い頑張りましょう、と激励の言葉を投げかけると「ベトナムは近くていいねぇ(笑)直近便高いでしょう(笑)バイクに轢かれないように気を付けてね(笑)」一見煽ってる感じにも思える、やけに、にこやかな返事が返ってきた。

この殺伐とした感じ・・・。食うか食われるか・・・。実力と運不運が交差する勝負の世界・・・。友人の何気ないメールの文面から「ポーカーの旅が始まった!」と一人で勝手に期待とワクワク感を胸に膨らませ、鼻息荒く、意気揚々と旅行バッグを手に取ったのだった。

そんなこんなで今年一番の寒さを記録する日本を脱出して、平均気温30度のベトナム、ホーチミンにやってきたのである。

空港を出ると、さっそくタクシーの運転手が声をかけてくる。

こういう所で声をかけてくるのは大体ボッタくりタクシーと相場が決まっている。さんざんフィリピンで痛い目に合ってきているのだ、ぼかぁ、分かってるんだぜ。しかも、こんなこともあろうかと、事前にネットでベトナムのタクシーについて検索してきた。白と緑のタクシーがあって、どうやら緑の方が安全らしい。

声をかけてくるおっさんの先には白いタクシーが・・・。「白タク、こいつは黒やでぇ」という脳内のささやきと声をかけてくるおっさんを無視して、空港のタクシー乗り場へ向かう。

タクシー乗り場に並んでいると、誘導員の人が場所を聞いてくる。地図を見せると、大体15万ドンくらいだという。おそらく、値段のことなのだろう(通貨のことがよくわかっていない状態である)。並んでいるタクシーも緑だ。安心して車に乗ると、誘導員の人が運転手に目的地と値段を告げた。

運転手は何度も電話をしてホテル名の誰かに聞きまわっていたので、ちゃんと辿り着くのかわりと心配していたのだが、無事にホテルの前についた。すると、おっさん「35万」だ、と言い始める。「いや、15万って空港の人言うてたやん(英語)」「ああん?35万!」「(メータを指さして)17万って書いてあるやん。20万払うわ」と言って財布を広げると、おっさん、素早い動きで僕の財布から50万を抜き取る。

僕があっけにとられている間に、スっと2という文字のついた札を、またもや素早い動きで僕の財布にねじ込んだ。そして外に出て、荷物を預けてもいないのに白々しくもトランクを開け始めたのだった。

確か30万ドンは日本円にして1500円程度。頑張って交渉して正しい値段にしても、せいぜい500円くらいか・・・はあ・・・まあいいか、交渉するのも面倒だし、今からトナメ出るから時間も惜しいし・・・。

などと、自分にいろいろ言い訳して僕が荷物を持って外に出ると、了承したと思ったのか「サンキューーー!」と言って、3秒でいなくなった。

まったく・・・とふと財布を開けてみると、運ちゃんがねじ込んだ札は「2万ドン」札。

「日本円にすると、2万ドンって100円じゃねぇーーか!!!ゼロが一個足らんんんん!」脳内がささやきを忘れて叫びだした瞬間である。

35万ドンどころか48万ドンも支払っている。ああぁ、またやってしまった・・・。海外慣れを自称している身としては恥ずかしい限りだ。

しかし、こんなことでくよくよ悩んでいる暇はないのである。なぜなら今日は既にポーカーのメインイベントが昼の1時から始まっており、今の時間は3時なのだ。2時間遅刻なのだ。

ホテルで昼の間に届いていた、仕事のメールを高速で処理して、3時半には顔を洗って、タクシーに飛び乗ってポーカー会場へと飛んでいく(このタクシーは定価だった)。

pro poker club ベトナム

※PRO Poker Club という会場。その玄関。

会場に着くと、待合部屋みたいなところに見知った顔の人がいる。ウェスティンさんだ!

ウェスティンさんはAPT(アジアンポーカーツアー)に参加する日本人の方々をいろいろと助けてくれる人である(両替や参加のアシストなど)。前に会ったのが韓国のテグだったので、2年ぶりだ。最近、sns上で、よくインマネしている情報を目にする、めきめきと腕を挙げられているプレーヤーさんだ。

今回は日本円でもエントリーが可能という噂を聞いたので、詳しく方法をウェスティンさんに聞いてみた。曰く、正確には日本円でエントリーということではなく、日本円をここで両替すると、両替分をホールドしてくれることらしい。ホールド方法など手取り足取り親切に教えてもらい、メインイベント代を支払う。

「よーし、やったるでー」鼻息をフンハッと吐き出しながら、参加証のレシートをチップとテーブル番号の札を配っているお姉さんに渡すと、残念そうに「9人目ね」と言われる。

「えっ!?まさか9人目って・・・」
「そう、あなたの他に8人も待っている人がいるわ」

まさかのウェイティングである。

(ウェイティングとは、テーブルが参加者でいっぱいの時、誰かが負けてテーブルからいなくなって席が空くまで、待っているという意味。)

人が多いと聞いていたが、まさかここまでとは・・・。

ぼんやりと待つこと1時間。夕方の5時少し前にようやく席に着くことができた。

けっこうな遅刻っぷりな時間だけど、実はAPTのメインイベントでは特に問題のないのである。1時間回しのストレクチャーで5万点持ち、レベル1は100/200からのスタートだ。参加した時は、レベル4の終わりかけで、ここでもまだ200/400のお時間。まだ125bbもあるわけなのだ。4dayイベントなので、じっくりゆっくり楽しめる大会である。

序盤なので、まったく無理せず、良いハンドだけ待つ作戦。

とりあえず、ポケットがセットになればいいなぁ、という考えで挑む。席に着いてから1時間後くらいに99が来たので、もちろん参加する。そんでもって、さっそく9が刺さる。ヘッズになり、フロップとターンをポッドの40%ずつくらい打っても相手はついてくるじゃないか。しめしめと思っているとリバーで9が落ちた!ク・・・クワッド!!

なんとしてでもコールしてほしいなぁ、とターンと同じだけの金額をベットするが、さすがに相手も怪しいと思ったのか降りてしまった。

序盤なので、大したプラスでもないのだが、クワッドなんて幸先がいい感じだ。

そんなクワッドから1時間後。

次は、4のポケットが手に入るので、これまた参加。するとなんということでしょう、フロップでクワッドになるじゃありませんか!参加者は3人。僕がチェック、オリジナルがレイズ、コーラーの兄ちゃんがコール、僕もコール。ターンも同じパターン。リバーも順番が最初の僕がチェック、するとオリジナルが少し弱めにベット、コーラーがコール、そして僕がポッド分を投げ込む。オリジナルが降り、チップが少ないコーラーの人が少し悩みオールイン。ありがたや、である。

そこから何もなく・・・本当に何もない時間を過ごすことになる。

タイトに安全に戦略なので、フロップで当たらなければ、さくっと降りる形をとっていたら、ラスト3ハンドになる頃には、ほぼ原点に近い5万点付近になっていた(クワッド祭りだったのに・・・)。

そのラスト3ハンドになった時だ、隣の白人の兄ちゃんが「実は俺、Day1Aで5万点以上で通過しているんだよね。だから、この手元にある3万点を倍々ゲームで増やさなきゃ、このDAY1Bに参加した意味ないんよね。」とニヤニャしながら、オールインを匂わせる。

わりと、少ないチップで次の日に時間がとられるのが嫌だと言って、ラスト数ハンドでポンポン放り込んでくる人は多い。欲しい。あの白人の兄ちゃんのチップが欲しい!いいハンド来てくれー、と手のひらをスリスリしていたら、AAがやってきた。キ・・・キターーーーーー(゜∀゜)!

ブラインドは500/1000。僕はミドルポジション。とりまAAなので、レイズイン。すると、隣の兄ちゃん、宣言通りチップを全部押し出してきた。みんなが降りて僕が楽々コール。僕がAAを見せると、周りに人達が半分慰め、半分からかいの感じで兄ちゃんをはやし立てる。兄ちゃんT3o。僕のAAを見て、若干切れそうになってる。怒るならやらなきゃいいのに・・・。そして、何事もなくAAが勝った。

兄ちゃんは分を合わせて結局Day1は89400点で終了。5万点スタートだから、いい感じにプラスだ。次のブラインドは600/1200くらいだから、まだまだのんびりポーカーができそうだ。

試合が終わって、待合に戻ると、同じくDay1を通過したポーカープロの土川さん達と出会う。ベトナムに今回来ている日本人の方々をご紹介してもらい、食事に誘ってもらったのだが、朝五時起きから飛行機&ポーカーで、あまりにも疲れすぎていたので辞退させてもらった(すんません・・・)。

土川さん達に別れを告げ、外でタクシーを捕まえようとするのだが、まったく捕まらない。と、いうか、なんやら国旗やトロフィーを持った若者がクラクションと歓声と奇声と金切声を挙げながら集団で道路を暴走している。タクシーを見つけても呼び止められる隙がない。

ベトナム サッカー

後で聞いたのだが、サッカーの試合でベトナムが勝ったらしい。この時は分からなかったので、建国記念日?ニューイヤー?ベトナム正月だっけ?と訝しげに眺めるだけだった。

あまりにもタクシーが捕まらなさすぎて、さっき別れを告げた土川さんのところに戻って、何かいい方法はないか、と相談するといつものあの優しい怖い顔で「歩いたらいいんじゃないかな。ベトナムは安全だよ」と限りなく原始的に近いソリューションをご提案頂けた。

ホテルは観光地で有名なベンタイン市場のすぐ近くである。ポーカー会場から直線距離で2、3キロくらいだ。確かに歩けないこともない気もする。

素直にアドバイスに従い、とぼとぼと歩いて帰ること30分弱。なんとかホテルにたどり着いた。意外と近いのかもしれない。しかし、横断歩道を渡るのが一苦労だ。バイクがあっちゃこっちゃから湧いて出てくる(しかも熱狂している)。

いつもならコンビニでビールか何か買って帰り、異国の酒をちびちびやりながら、ホテルの小さい机でブログのメモを書き散らかすのだが、その日はそのままベットに吸い込まれ、泥のように眠ったのであった。

つづく。

APT ベトナム その2