レッドドラゴン(2015秋)~その4~

大小

段々と朝ごはんを食べるという習慣が消失していく。面倒というよりも、起きる時間が大体昼頃になるのだ。サラリーマンだった頃には考えられない生活だ。

昼ご飯に飲茶系を食べたいと、ちょっと前に歩いていて見つけたお店に入った。

飲茶と中華料理をいくつか注文し、ゆったりとお茶を呑んでいると、テーブルに上に「コンニチハニキー」とあの黒々とした生命力の高い、火星で驚異的な進化をはたすかもしれない、例の生き物に出くわす。驚いたY氏は服に食べ物をこぼす。近くのおばちゃんは「何だただの虫じゃねえかよ」と鼻で笑う。おっさんらも不思議そうに僕らを見る。この招かざる虫ニキにみんなのテンションがだだ下がる。

ニキーはサササッとテーブルの真裏に潜む。テーブルをバンバン叩いてもどこにも行こうとしない。

ニキーが張り付いたままのテーブルで、ビクビクしながら、粛々と飲茶を食べた。

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※(味はそこそこ)

今日のイベントは2万HKとそのサテライトだ。さすがに2万HK(約30万円)の参加費を払って出場するのは気が引ける。賞金でまかなえるが、できればサテライト(予選)を突破して出場したい。

そう思って、2,500HKのサテライトに登録すると40人ほどのウェイティングがあると言うではないか!20分回しのチップ量が2500ほどのトーナメントに40人はさすがに待てないぜ。だって、入れる頃には、手持ち5BB とかになる。ナンセンス!

仕方ないので、3500のサテライトに切り替え、2時間ほど待ちぼうけ。ようやく参加するも、ハンドが何もこなくて、すぐに終わってしまった。サテライト系は打ち回し云々というより、最初にさくっとダブルアップ出来ないと話にならない。

キャッシュ(リング)に行こうとするが、ここでも42人待ち。何時間並ぶんだよ・・・。レッドドラゴンに飛んだけど、帰りの飛行機はメインイベント最終日にしている人たちがそうとう余っているんだろう。皆、トーナメントがないと暇なのである。

暇つぶしに大好きな「大小」で遊ぶ。ポーカープレーヤーはバカラが好きな人間がとても多いのだが、僕はどういうわけか「大小」が好きだ。サイコロの目って「THE賭け事」って感じがして、心が踊る。

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と、いっても遊ぶのは、10HK(150円)から遊べる機械式大小だ。1000HKを機械にグイーンと吸い込ませ、手元の赤いボタンをバシッと叩き、サイコロを弾く。ちびちびかけながら3時間ほどかけて3500HKほど増えた。

僕はオカルトプレーヤーなので、流れを大切にしている。大小という二分の一を9連敗した所で本日のツキは完全になくなったと判断し、海外で初めてキャッシュを打っているY氏の元に戻る。Y氏、今日はこの間3位になった賞金で普段お世話になっているOさんに食事を奢るらしい。微笑ましい話である。トーナメントのサテに負けたので、僕も一緒についていくことに。

しかし、まだお腹空いていないし、時間もまだ早かったので、時間を持て余す。そこで、バカラプロへと華麗な転身を決めたOさんに出会い、バカラの極意を見せてくださいと頼む。

二人でよさ気な罫線のテーブルに座り、プロの打ち方を見せてもらう。一発、2000HK(3万円)の僕からしたらチビリそうなほどのレートの台だ。そこで、プロはバシッバシッと軽く二連勝して4000HKをものの5分で勝つ。

「お金って簡単に増えるんだなあ」と関心。気持ちが高ぶって、プロが「まだだよ」という忠告を聞かず、エイヤッと僕も自分の思う方に2000HK賭けてみた。

ギュギュッと絞ると、「8」!!3分の1でフェイスガードだ!来てくれ!こいッ!魂を込めて、カードをめくると「4」ッッッ!合計が「2」になってしまった!ヨワイ!

相手は「4」とフェイスガードの「0」で合計「4」。まだ頑張れる!

ディーラーに配られた最後のカードに手をかける。お願いします!さっきまで10HK(150円)で遊んでいたんです!出来心なんです、2000HKなんて!一回だけでいいので勝たせてください!

ギュギュッと絞る。「8」だ。「2+8」は・・・。ゼロ!0点取っちゃったよ僕!

2chのFXスレにいる住人のような悲鳴を上げて、天を仰ぐ。例えるならば、風来のシレンで苦労して95階まで降りて行けたのにあっさりと死んでしまったほどのショックを受ける。(分かる人には分かるこの絶望感)

やっぱり才能がない。とある友人によると僕の逆張りをすれば100%勝てると豪語しており、実際にその通りになっている奴がいる。

自分を信じてはだめだ。そもそもさっき大小で9連敗してきたばかりじゃないか。

掛け金を取り戻すために、調子のよいOさんに乗って賭けることにする。2000HK返してもらうだけでええんやで!もうそこで止めるんや!

そしてOさんと僕の連合軍は「3」対「4」の僅差で負ける。てか、負け?本当に負けたの?と自分の頭をコンコンと叩いて夢じゃないか確かめてみると「今日はマイナス500HKだよ」と僕の脳に住んでいる理性が答えてくれた。

「バカラなんて二度とやるか!」とお決まりの定型文の捨て台詞をはいて、大小に帰る。なんとか500HKを稼ぎ、本日の収支をプラスマイナスゼロに戻し、ふらふらした足取りでY氏の元に戻る。

Y氏の元には、浜松や東京の方などたくさんの日本人でわいわいしていた。せっかくだから皆で行きますか。と総勢7人になる。レッドドラゴンもDAY3に入り、全員が大体の試合を終えており、必然、試合の結果はポーカーのハンドの話で盛り上がる。

なんとなく、もっとも高額賞金を取ったY氏がごちそうするという雰囲気になり、まわりも冗談交じりに「ごちになります~w」などと軽口を叩いていたのだが、店に着くと思いのほか高級店で若干「え、おごりで大丈夫なん?」と心配そうにY氏を見つめる30を超えた大人の連中。何を頼んでも一品が最低1800円以上だ。そんな中、一人だけ「ワインでもあけますかー!ガッハッハッハ」とOさんは上機嫌である。

Oさんがちゃっちゃと仕切って次々と数万円するお肉やボトルワインを頼んでいくので「あ、20代前半のY氏がおごるって話だけど、あとで長老がなんとかしてくれるんだろうな。同じ京都だしな。若い子に花を持たすためにそう言っているんだろうな!きっとそうに違いないなッ!」的雰囲気になり「今度、京都にお邪魔させてもらいますね!」「Y先生いただきます!」とそれぞれ思い思いにY氏を応援する。

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厚さ3センチ以上もあるステーキやぷりっぷりした海老や貝が運ばれてくる。「こんな旨い肉食べるの初めてですね」「本当ですね」と一口ごとに感想を言い合う。

普段はコップ1杯で酔うY氏、やけくそ気味にビール一本をあけ「なんでも頼んでください!!」と青い顔をしながらマカオの中心で愛を叫ぶ。

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まあそれでも、常識の範囲内の金額で収まり、僕も周りもほっと胸をなでおろす。

その後、酔いつぶれたY氏をおいて、皆でタクシーに乗ってカジノへ向かう。やっぱりポーカープレーヤーはバカラが好きなようだ。僕もさきほど二度とやらないと宣言したばかりなのに「レ、レート安いし(一回300HK)」とか訳の分からない理由で一緒に遊ぶ。よくよく考えると全然安くないんだけどね。

才能がないゲームで勝てるわけなく、数万円負けた後、有名な浜松プレーヤーさんの部屋に行ってチャイニーズポーカーを始める。

気がついたら朝の7時になっていた。

マカオの抜けるような空の青さが眩しい・・・