APT ベトナム2019 (その1)

「暑い。」

飛行機を降りた直後はそんなに温度を感じなかったのだが、空港の出口に足を踏み出した途端、ああ異国へ来たのだなと実感する。

再びベトナムにやってきた。

僕はなんとなくベトナムが好きだ。ご飯も割と美味しいし、ごちゃごちゃーっとした雑多な感じも良いし、旅行者も多いからか英語も案外通じる。なにより物価が安いのが善良な小市民たる僕にとって、とても気が楽だ。

「安い=うれしい」「安くて良い=スゴイうれしい!」そんなコスパ重視という現代病にかかった僕は、市内への移動手段もバスにしたのである。宿をとっているベンタイン市場付近まで、日本円で100円で行けるのである。100円ですよ、奥さん。でも、ベトナム価格でいうと、20,000ドンである。急に高く感じる。

長袖に分厚いコートを手に持ち、ふうふう汗をかきながらバスに乗り込むと、似たような欧米系の旅行者がちらほらと入ってくる。

バスは案外混んでいない。黄色い服を着た職員の人が一人ひとりに行き先を聞き、場所に到着するとわざわざ声をかけに来てくれる。親切だ。

こんなことなら、前回もバスにすればよかった。そうすれば、ボられることもなかったのに・・・と、思わず遠い目になってしまう。(前回のブログ(APTベトナム2018)はこちら→

今日は「ショートデッキテキサスホールデム」と呼ばれる通常よりカードの枚数が少ないポーカーの試合に出場する予定だったのだが、飛行機が遅れ、イミグレーションを通るのに1時間半もかかってしまったことから(混雑とレーン選択ミス)、時間的に間に合わなくなってしまった。

仕方なく、ホテルに向かい、シャワーを浴び、タイトなジーンズに太ったボディをねじ込み、夕方から始まるサテライト(予選)に出場することにしたのである。

今回の大会はアジアンポーカーツアー(通称APT)と呼ばれる、文字通り、アジアのツアー大会だ。他のポーカー大会と比べ、賞金獲得の幅を広めにとっていたり、遊べる時間が長く設定され、短期間でたくさん遊べるスケジュールが組まれている、なんともユーザーフレンドリーな大会なのである。

会場に到着するとポーカープロの土川さんと一ノ瀬さん、そしてAPTの世話役のウエスティンさんがゲームをプレイしていた。

挨拶もそこそこに僕もサテライトに出場するが、これといった特筆するようなハンドもなく、さくっと敗退。

10bb時のJQsで決死のオールインは、TQに受けられてなぜかチョップ(引分け)。最後の3bbでビッグブラインドでの68オールインも 68(オリジナルレイザーのチップリ) vs 68(僕) vs AQ(漁夫)というなんとも度し難い終わり方だった。

まあショートデッキに出れなかったかわりだし!明日の本番への準備運動みたいなものさ!そもそも最近、仕事やプライベート、その他もろもろのトラブル案件で全然ポーカーできていなかったしね!とむりやり自分を納得させようと思うが・・・悔しいものは悔しい。

会場の隅でAPT関連の仕事をしているウエスティンの近くに行き、隣に座り、ぼんやりと世間話をする。

試合終了後にポーカー会場の近所で日本人の皆で集まって食事に行っていて、後から僕たちも合流する予定である。

ウエスティンさんの仕事や一ノ瀬プロの試合が終わり、3人で連れ立って向かい食事会に合流。焼き豚屋さん。壁に日本語が書いてあった。日本人経営の店だろうか。

明日からの快勝に向けて、ビールをたらふく飲み、英気を養えたのであった。

次の日。

今日は僕の最大の目的であるチャンピオンシップのイベントがある日だ。

今回泊まっているホテルには無料の朝ご飯がついている。食事会場はホテルの屋上で、朝の9時までやっている。風が気持ちよく、見晴らしもよい。

おばちゃんが、フォーとオムレツ作ってくれた。合わせて、バナナと焼きそばとパンも食べた。

あきらかに食べ過ぎであるが、ポーカーをやっていると極めて食事が不規則になるため、ガッツリ食べておいた方がよい。本当だぞ。

しっかりコーヒーまで飲んで、部屋に帰って仕事のメールなどの返信作業をもくもくと行う。気がつけばお昼になっていた。

ポーカープレーヤーはいつ食事にありつけるのか分からない生きざまをする類の人間である。食べれる時に食べておかないと、後悔することになる。

よし、メシを食べよう!と、歩いて五分くらいのバーガーキングへ。

海外で食べるバーガーキングは、あきらかに日本のものより大きい気がする。いや、実際大きい。バーガー食べるなら、前回見つけたところでも良かったのだが、実は僕はめっちゃバーガーキング好きなので、海外で見つけたら必ず入ってしまうのである。けして、ひよっているわけではない。

冬眠前のクマのように腹が満たされ、ふらふらしながらバイクタクシーに飛び乗り、ポーカー会場へ。

APTのメインイベントとチャンピオンシップには、バブルプロテクションと呼ばれる保険のようなものがある。

試合開始時にテーブルに座っていると、もしバブル(賞金獲得できないギリギリの順位)で飛んでしまっても、参加費が払い戻されるというものだ。

以前、韓国のテグの大会で友人がバブルで飛び、バブルプロテクションを発動させていたのを目の当たりにしたことがあったので、つけておいたほうがよいと思いつつも、もじもじしているうちにゲームがスタートしてしまった。

結局、ポーカーを早くプレイしたくてレベル2ぐらいから入ってしまった。このレベルで入るなら、最初から入っても良かったのではないか・・・。ううむ。

チャンピオンシップは、5万点のチップをもってスタートする。レベルは一時間で一つ上がる、非常にゆっくりとしたストラクチャーである。いろんな人が、このストラクチャーを激褒めしている。

さて・・・さっそく、レベル3あたりでAAがやってくる。レイズが入ったので、リレイズを入れると降りられて終わる。ちぇ。とはいえ、幸先のよい感じだ。

レベル4でも再びAA到来。アーリーがレイズしてきた。ミドルポジションの僕はちょっと考える。まだ序盤なので、結構強めのスクイーズを仕掛けてくる人がちらほらいる。狙いはスクイーズ野郎だ!そう思い、コール。 

すると全体的に肌色の悪い、麻薬中毒者みたいな白人のおっさんがレイズしようかどうか迷っている。ラリってオールインしてこい!と無茶苦茶な願いを願うが、期待に反してコールしてきた。人数が多いからって理由でBBもコール。4人。最悪の展開だ。

Aが刺さり、強くなりすぎて、誰もついてこれず終了。まあ、三人分貰えたからよいか。

しかしその後が、全くハンドが入らない。

適当なハンドでピュアブラフもまぜているのだが、リレイズされたり、ドロー同士のオールインに巻き込まれたり、散々な目に遭い、チップだけが無慈悲に減っていくのであった。

そして5以上のポケットやAKなど一度も見ることなく、四時間が経過し、デイ1を通過。123人参加者がおり、60人が通過。僕は59位となんともあれな結果だ。通過したとはいえ、次の日に数ハンドで終わってしまうようなチップ量である(10数bb)。

まあ、仕方ない・・・。気を取り直していこう。

試合終了後、昨日に続いて、本日もありがたいことに日本人の皆とご飯に行けた。ご飯は皆で食べる方が圧倒的に良い。海外行きたての頃は、寂しくコンビニ夜食で済ましていたものだ。

土川さん、ウエスティンさん、ヒゲさんと連れだって、日本人街にある韓国料理屋に入って、だらだらと過ごす。途中で疲れきった顔の一ノ瀬プロも合流。

運気の回復を願い、僕は安いビールを煽るように飲み続け、ベトナムの夜はふけていく。

~~その2に続く~~