APTベトナム その4

ケバブ

~~~前回のあらすじ~~~

メインイベントのDay3に進むもののインマネを目の前にして敗れるもりゃ~ま。自らの遅刻のせいで、サイドイベントにも出場できず、失意のまま項垂れている所に、仮想通貨のクラッキングの噂を耳にする。奪われた通貨はNEM。もりゃ~まが唯一持っていた通貨。ポーカー備忘録だったこの日記は一体どこへ向かおうとしているのか。

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結論から言うと、コインチェックでNEMを購入はしていたが、マイニング(NEMではハーべスティング)をするために自分のPCに移していたので、何ともなかった。せいぜい値下がりが辛いぐらい。ツラタン。

ウェスティンさんも近くに座っていて「知り合いの方々の投資額を全部合わせると・・・1億から2億くらいやられているかもしれないッス」と不穏な話をしている。ポーカー関係者には経営者が非常に多い。サラリーマンの方がマイノリティという不思議な世界だ。話の内容が大きくて、たまに常識がおかしくなる時がある。

そんなこんなで、皆さんとお喋りに興じていたのだが、一ノ瀬さんがハイローラーに向かい、ウェスティンさんもモンスタースタックへと吸い込まれていった。

ああ、無常。

諦めきれず、未練たらたらで受付前に行くと同じように残念そうな顔をした日本人の方がいた。わりかし僕は人見知りをする方で、僕から話しかけることは少ない。しかし、今は同志を見つけたような気分になり、「開かないっすね・・・」と、ヘヘヘと三下っぽく喋りかけたのであった。

すると同志はストラクチャー表を取り出し、このレベルまでに入れれば勝負ができる、と希望に満ちた眼差しで僕の後ろにあるレベルが表示されている画面を見つめる。同志はまだ試合を捨てていない!いわれてみると確かにと納得。30分回しのストラクチャーで、持ち点は3万点からスタートするのだ。マカオのように遅刻すると10bbからスタートというサイドではないのだ。APTなのだ!

ディエンビエンフーの戦いで撤退を余儀なくされたフランス軍なみに暗い顔をしていた僕なのだが、一縷の望みをかけて待ってみよう、と自らを奮い立たせる。

望みが叶ったのか、受付の前で同志と立ち話をしている最中「ヘーイ。レジスト空いたよ~」と受付のお姉さんより一つランクが偉い感じのするおっさんに声を掛けられる。やったぜ!

ウェイティングの受付をすると「52」とレシートに書かれる。も、もしや・・・。

「大丈夫大丈夫。52番目だけど、もうすでに37番まで呼んでいるんだ。あと15人だから!」

メインイベントも100人を切り、徐々にテーブルが空いてきていた。1時間もしないうちに、テーブルが一つ空き、待っている10人が呼ばれ、無事に僕も席に着くことができた。この時レベル7の半ばくらい。200/400 50。手持ちは3万点の75BB。余裕のよっちゃんである。

テーブルはメインよりもさらに緩い。いい感じだ。ただ一人、APT player of the year(年間最優秀賞)を何年も連続で獲得しているサムがいるということを除いて・・・。

ハンドもいい感じにやってくる。サムとの勝負だけを避け、取れそうなところからコツコツとチップを集めていく。そして、またポケットがクワッドになった。大きく稼ぐことができないけど、Day1だけはハンドが唸る。

そして、また判断に迷うQQが手元にやってくる。レイズインでアーリーから入っていたので、今回は素直に3ベットいれる。すると、オリジナルがコール。

フロップ。38J

相手がチェック。僕がポッドの40%ほどベット。相手は少し悩んでコール。

ターン Q

おお、刺さった。相手はチェック。ここは大きく稼ぎたい。相手に打ってもらいたいので、僕もCB打ったけど付いてこられちゃった、ああ残念って顔をしながらチェック。

リバー 2

相手が僕にオールイン要求をしてきた。プリフロップで3ベットにコールしているので、9Tの可能性は低いと思うし、フロップとターンのチェックでJもQもなさそうだ。下のポケットで降ろしに来たのかな。なんにせよ、予定通り、打ってもらったので、こちらもオールイン。

なんと相手からは、2と3のツーペア。2本拾ってもらってラッキーだ。

このハンドで無事にダブルアップ。しばらくのんびり遊べそうだ。そしてありがたいことにテーブルがブレイクした。サムと別のテーブルになれる!これもまたついている。

次のテーブルでも強運を発動。

AAで潜って、チェックコール、チェックオールイン要求。すると、77で全部入れてきた人がいて、確率通り勝つ。これで約10万点まで増えた。Day1を余裕で通過。チェックレイズすると、なんかみんなムキになって突っ込んでくる。

11時半くらいには終了。10万点以上のほくほくで終える。同じくDay1を無事に通過したウェスティンさん、ADさん、そしてハイローラーのDay1を通過した土川さんの4人で遅めの晩御飯へ出かけた。

中華&ベトナム料理が食べられるお店。

ベトナムで中華

ベトナム料理を食べていて思うのが、汁物系の出汁が美味しいところが多い。関西人の舌に会う出汁だ。火鍋を頼んだのだが、スープがことのほか美味しい。ウナギの素揚げやイカのレモンバター揚げ、貝、蟹、野菜の一つ一つ、何食べても美味しかった。

レモンイカ ベトナム火鍋

唯一美味しくなかったのが、鶏とにんにくに卵をかけた謎のモノ。鶏がフニャフニャしていて、どこの部位かも分からず、新しい感覚の駄目な感じだった。

鶏とにんにく

深夜の2時を過ぎるころ、この中華屋さんの近くでサロンの仲間と飲み歩いていた一ノ瀬プロ達が合流。既に一ノ瀬さんも顔が赤く、ワイワイと楽しく盛り上がる。

「もりゃ~まは、何歳だと思う?」と年齢不詳な土川さんが一ノ瀬さんに問題を出す。そういえば、話したことなかったかもしれない。「僕、リーディングには自信あるんですよ。当てに行きますよ」とキリっとした顔で「・・・41歳!」と見事に外す。ちなみに僕は一ノ瀬さんと1,2歳程度しか変わらない。プロのリーディングを我々初心者は過信しすぎているのかもしれない。

「お食べください」と、鶏とにんにくに卵をかけた謎のモノを一ノ瀬さんに渡す。微妙な顔をしながらモグモグと鶏を咀嚼している表情を酒のアテにし、僕たちは火鍋の続きを食べたのだった。

さて、最終日。

なんとかDay2に残ったからポーカーができる。あとは、どれだけ粘れるかだ。飛行機の出発は深夜の12時20分。2時からスタートで、残りは60名。116エントリーで、20位からインマネ。目標の賞金獲得まで残り40人だ。ファイナルテーブルに残ってもおそらく、飛行機には間に合うはず。

昨日と同じ席でスタート。実は途中で変わっていて、日本人が多く座る席に今はいる(10人中自分を含め4人日本人)。

チップがボチボチあるので、定期的にスチールも仕掛ける。ある時、スチールがバレて25bbくらいのオールインで防御された。そんな矢先、KKがやってくる。さっきと同じ感じで、チップを入れると、これまたさっきと同じ人が僕がスチールしてきていると思ってオールインで僕を狙ってくる。もちろんコール。

相手はA7。Aが当たることなく、相手はさくっとチップを失い、そそくさと席を立ったのだった。同じテーブルの日本人の方が「あっけない感じでしたね・・・」と感想を呟く。他人事ながら安易にオールインは危険なので、気を付けようと思った。

そうこうしているうちにテーブルが3卓になる。残っている日本人もおそらく僕とウェスティンさんだけ。現在27名。あと7人飛んだら賞金獲得だ。

2500/5000 アンティ500。僕のチップは12万点ほど。じーっと耐え続ければインマネはできるのだろうけど、インマネしかできないチップ量だ。上位を狙うなら、ここで勝負に出たいところ。

そんなとき、AQが来た。じわじわ皆インマネを意識し始めているので、スチールだけでもOKだ。とりあえずレイズイン。するとボタンのベトナムっぽい方がコール。ヘッズアップだ。

フロップ。A95

相手は、強く打たれると降りてしまうタイプのプレーヤーだ。でも、参加したがりでもある。ここは、まず様子見チェック。すると相手は、10000点ほどベット。間髪入れず、25000のリレイズを僕が入れる。すると、あまり悩まずオールインをしてきた。相手のチップは10万点程度。僕の方が2万点ほど上だ。

相手の強いベットには、いつもはけっこう時間をかけて考えていた。プリフロップの際も参加するかどうか迷っていたから、低いペアなのかもしれない。AKならプリフロップで3ベット入れてきているし。セットの場合は、彼にしては打ちすぎな気がする。明らかに降りて欲しがっている雰囲気を感じる。8以下のペア、9T、またはフラッシュドローだ!ワイの勘ピューターが行けと言っている!ここが勝負どころだ!

コール。

僕が先にAQを見せる。すると相手はしまったという顔をして、25をテーブルの上に落とす。やはりフラッシュドローだ。でも、思ったよりも相手はアウツがあるし強い・・・。(実は勝率は相手の方が高い)

ターン 8

よし。大丈夫。

リバー!

ひぇえええー。ダイヤが落ちた!まさかのフラッシュを作られる。

これで僕のチップは3BB程度になる。いつもなら「ふう、なんとか致命傷で済んだ」と市況板の住人のセリフを吐いているのだが、インマネを目の前にしてさすがに心が折れ、マジかぁ~っと深く椅子に沈み込んだ。

最後は自然死を逃れるため、アーリーポジションで7Kオールインする。TKが出てきてあっけなく試合終了。

順位は23位。賞金獲得まで、残り3人だった・・・。実に残念である。

飛行機の時間まで余裕があるので、メディア席を借りてブログの執筆を行う。途中、みんなが毎日食べているというケバブ屋さんに行って、ケバブを買ったり、両替の時にもらったチップでビールを買って、のんびりと過ごした。

サッカーの試合があったらしいのだが、ベトナムが負けたので、外も静かである。もしこれが勝っていたなら、道路はバイクで一杯になり、空港まで行くのに一苦労しただろう。なんせ、交差点で集まってみんなでクラクションを鳴らして騒ぎまくるのだ。サッカーで交通が麻痺するのだ。メインカルチャーがあって、国民のほとんどを熱狂させられるコンテンツって凄いな、と思う。

そういえばお土産を買ってなかった!少し早いけど、空港に行って何か物色するか。

荷物を持って10時くらいには外に出た・・・その時・・・驚きの光景を見ることになる。

国旗を持って爆走するバイクだ!

なぜだ・・・。ベトナムはサッカーで負けたんじゃないか・・・。ふと、スマホの画面を見ると、Facebookに同じく今ベトナムに来ている藤家さんの投稿があった。曰く、ベトナムがサッカーのU-23で準優勝したらしい。ちなみに藤家さんもタクシーに乗っていて、まったく進んでいないらしい。

まずい、まずい、まずいぞ!!

Grabを立ち上げる。バイクも車もすべて真っ赤に特別料金設定になっている。これはラッシュアワーや渋滞などで適応される料金だ。やばいぞ!

のんびりケバブを食べて「まいう~」なんて写真撮っている暇なんてなかったんや!

ケバブ

※ケバブまいう~。

とりあえず、まだポーカー会場の前は渋滞など起きていない。会場のセキュリティに、タクシー一台呼んでくれと声をかける。その間、地図を見て空港の場所をチェック。いざとなったらバイクでいかなければいけない。旅行バッグはガラガラ引くタイプのハードケースではなく、肩から下げるスポーツバッグだから、僕がバッグを担げば最悪バイクでもなんとかなる。

どうするどうする、と考えているうちに、セキュリティが頑張ってタクシーを止めてくれた。「ホテル!ホテル」と言ってセキュリティがホテルの名前をタクシーに告げろと言ってくる。「いや、エアポートだ」「ホテル!ホテル!」「エアポート。サイゴンエアポート!(なぜ旧名で言ってしまう)」「ホテル!!ホテル!」「エアポー・・いや、もうこれ見てくれ」とタクシーの運ちゃんにスマホの画面で空港の位置を見せる。(セキュリティの人「タクシー」という単語しか通じなかったことを思い出したのだった)

しかし、タクシーの運ちゃん、まるで悪魔に魂が抜き取られたかのように無表情。意識があるのか?字は読めているのか?タクシーの運ちゃんだから空港は絶対に分かるだろう。と、僕の頭に「はてな」が浮かび上がった時だ、後ろから白人の老人が割り込んできて「俺は300払う!乗せろ!」と言い出してきた。

白人の顔をまじまじと見ると、ポーカープレーヤーではない。発音と顔つきから見るにたぶんアメリカ人旅行者だ。ポーカーはけっこうマナーにうるさいゲームなので、わざわざアジアまでポーカーをしに来ている白人は、まあまあマナーがいい人が多い(マナーにうるさすぎて、毎回喧嘩しているのも白人である)

するとさらに後ろから、欧米圏のマナーの良いポーカープレーヤーが「まあまあ、uberって方法もあるよ」とアメリカ老人を説得しようとしてくれた。

しかし、僕は一歩下がって、老人にタクシーを譲る。・・・僕には分かってしまったのだ。セキュリティーが「ホテル??タクシー??」と心配そうな顔で聞いてくる。僕は笑顔で「grab、OK、grab、Im OK」とアプリを見せ、急いでバイタクを呼ぶ。

バイクの数が刻々と増えてきている。遠くから歓声が上がる声が聞こえる。

僕の一回目のバイクの要求は「busy(忙しい)」と拒否される。周りに10台以上バイクがあるはずなのに、全員がbusyらしい。冷や汗が流れる。老人が一生懸命にホテルの名前を告げお金を振り回している。二回目の要求は、ポーカー会場の前ではなく、少し歩いたところで、どこからでもアクセスがよさそうな交差点にピックアップ場所を指定。かなり長い時間がかかったが、なんとか少し離れた場所にいるバイタクを捕まえることができた。

荷物も持ってバイクが来る交差点に向かおうとした時だ、両手を上げてwhyをしている老人を残したまま、誰も乗せずにタクシーは去ってしまった。そう、今晩は丁度今からお祭り騒ぎになるのだ。そのうえ100%渋滞が起こることが分かっている。タクシーの運ちゃんの仕事へのモチベーションが高いわけがない。遠い空港へも、混雑した繁華街にも行くわけがないのだ。

交差点にやってきたのは、珍しく若くない細いおっさんだった。ベトナムの国旗が刺さっているバイクは古くてくすんでいて、恐ろしく馬力がなかった。エンジンを吹かしていないと止まってしまいそうなほど、オンボロだった。若者は仕事どころではないのだろう。

ノロノロと空港へと向かっていく間、どんどんバイクが増えてくる。無限増殖して、いつかは全員圧死してしまうんじゃないかと思うくらいバイクだらけだ。おまけに信号でとまるたびに「ベットナーーム」と歓声が上がる。ラッパを鳴らす者、奇声を上げる女、大声で雄たけびを上げる若者、道端で国旗を振る子供、あちらこちらから響くクラクション。

郷に入っては郷に従えだ。僕もバイクに刺さっているベトナム国旗を手に「ベ・・・ベットナーム!」と半ばやけくそ気味に叫ぶ。まさか異国の地で異国の国旗を振り回す日がくるなんて、夢にも思わなかった。

空港につながる大通りに出て、ようやく渋滞で動かなくなる心配がなくなった。

しばらく進んでいたら、空港が見えた!「International(国際空港)」と書かれている道は、高架になっていて、すごい坂道だ。このオンボロで二人と荷物を載せた原付じゃ到底登れそうにない・・・。

細いおっさん、脇道にそれて空港を迂回。大騒ぎなどなかったかのような静かな道を走る。おっさん自身も何度もスマホを確認している。最後には、外に立っている人に道を聞き出した。そして、どこかのマンションの駐車場で降ろされた。周りに人っこひとりいない。「え、空港に直接じゃないの?大丈夫!?」と身振り手振りで伝えると、近くのゲートを指してそこを通って歩け、と指で歩くジェスチャーをして伝えてくる。なんとかしてあげたいけど、おっちゃん分からんのよ・・・という人の好い感じのする心配そうなおっさんの目が、よけい僕を不安にさせる。

とにかく立ち止まっているわけにもいかず、言われた通りゲートをくぐる。不安すぎたのでゲートの前に立っているセキュリティの兄ちゃん(ますだおかだの面白くない方に似ていた)に「エアポート?」と聞くと「イエス~」といって道順を指さしてくれた。歩いていくと、社員専用の裏口みたいなところから、無事飛行場に到着したのだった。15分で来れるところが、なんだかんだあって1時間くらいかかってしまった。

こうして、最後は若干慌てたもののなんとか無事に飛行機に乗り、帰国することもできた。

ポーカーは結局結果を残すことができなかった。しかし、初めてくる国ということもあってか、毎日が楽しかった。

2年ぶりに会う人も多く、みんな「そういえば、最近見ていなかったなぁ」程度の感じで、覚えていてくれたことも嬉しかった。

ご飯が美味しかったことと、やはり夜でも安全というのが良かった。夜中に子供がうろうろしている国は久しぶりかもしれない。行きたくて行っていない場所もたくさんあるので、またもし次来る機会があれば、ぜひ来てみたい国だ。

さてさて・・・

そして、ここまでで、全部で大体2万字くらいになる。400時詰め原稿で50枚。短めの短編小説くらいはある。長々とここまで僕の個人的な日記を読んで頂き、ありがとうございます。

昔のように毎月はいけないけど、今年はまたどこかのタイミングで海外遠征したいと思っているので、もし、どこかでお会いした時は、よろしくお願いします。

それでは、またどこかのポーカー大会にて!

おしまい。